【デザイン思考は当たり前の行為だった】
遠い昔、世の中に何もなかった時代、人は自らの欲求を満たすために様々なモノを創造してきました。自然界のものを加工したり、くっ付けたり離したりしながら、人間にしか生み出せない何かを創造し続けてきたのです。そうしたイノベーションの積み重ねが現在の世界を創りあげています。近代の日本では、SONY、ホンダ、スバル、東芝、松下電器など、高い志を持った企業が様々なイノベーションを起こし、急激な高度成長期を迎えるまでになりました。

こうした時代を創り上げてきた過程では、無いもの、出来ないことをどうすれば出来るようになるかという考え方が日常だったのではないでしょうか?それに応えてきた企業が今日の大企業に成長しているのです。

【効率化の時代は限界へ】
そうして世の中が成熟し、多くの欲求が簡単に満たされる時代に入ってくると、企業は創造性のある仕事を捨て確実性を重視した効率化の戦い、つまりはコスト競争に邁進することになりました。少ない人数で多くのモノを短時間でいかに安く作るか?この事により製造技術のイノベーションは進みましたが、それもそろそろ限界を迎えています。大量生産の時代では、特殊な技術、難解な加工は敬遠され、誰でも作れる部品供給が求められるからです。こうして創造的だった企業は普通の企業に変容してしまいました。

【時代の要請】
日本企業が独創性を失いつつある中、急激な成長を遂げたのがインターネットです。あらゆる業種業態、国や人種を横断して発達したインターネットはこれまでの既成概念を大きく変え、多くの企業はその変化に飲み込まれ淘汰されていきました。

情報が行き交うスピードが格段に速くなると、プロダクト・ライフサイクルはどんどん短くなり、ひとつのヒット商品で一時代を築くような芸当は通じなくなりました。ひとつの主力商品の機能を改善していくだけでは、生き延びることができなくなり、顧客が持つ様々な要望、特に「意味的(情緒的)価値」が求められるようになったのです。

【意味的(情緒的)価値とは】
意味的価値とは、製品が持つ基本的な機能に加えて付加される顧客価値を指します。これにはコトラーの「マーケティングの8P」(ブログ参照)が解りやすいです。コトラーは、顧客のニーズは時代によって拡がっており、それらを8つのPによって表しました。意味的価値について、近年もっとも代表的なものが言わずと知れたiPhoneです。スティーブジョブズが「電話を再発明した」といったこの端末は、iPod、携帯電話、ネット端末という3つの機能を、携帯できるサイズとしてひとつにまとめたものです。この端末が様々な意味的価値を生み出し続けていることは説明の必要もないでしょう。

【意味的価値とデザイン思考】
ここで重要なのは、機能的価値の延長線上に意味的価値は存在しないという点です。もっと言えば、意味的価値を重視することで機能的価値自体も変化してしまう時代だということです。例えば、任天堂のWiiは、「体験」という意味的価値を重視するために、当時ゲームメーカーが競い合っていた基本性能や処理能力、ハイクオリティなゲームソフトという機能的価値を捨てました。その代わり、より複数プレイに適した端末へと機能的価値は変化を遂げたのです。こうした発想は「顧客は何のためにゲームをするのか?」という原点の問いに立ち返らなければ生まれない発想です。

ここに、なぜ今デザイン思考が求められるのか?についての大きなヒントがあります。機能的価値の競争から脱局するためには、これまでの既成概念や常識を振り返り、本質的な顧客のニーズに立ち戻らなければいけないのです。

デザイン思考とは、一をゼロに戻し、再び一を生み出すために求められているのです。

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