デザイン思考3 なぜ今デザイン思考なのか?

【デザイン思考は当たり前の行為だった】
遠い昔、世の中に何もなかった時代、人は自らの欲求を満たすために様々なモノを創造してきました。自然界のものを加工したり、くっ付けたり離したりしながら、人間にしか生み出せない何かを創造し続けてきたのです。そうしたイノベーションの積み重ねが現在の世界を創りあげています。近代の日本では、SONY、ホンダ、スバル、東芝、松下電器など、高い志を持った企業が様々なイノベーションを起こし、急激な高度成長期を迎えるまでになりました。

こうした時代を創り上げてきた過程では、無いもの、出来ないことをどうすれば出来るようになるかという考え方が日常だったのではないでしょうか?それに応えてきた企業が今日の大企業に成長しているのです。

【効率化の時代は限界へ】
そうして世の中が成熟し、多くの欲求が簡単に満たされる時代に入ってくると、企業は創造性のある仕事を捨て確実性を重視した効率化の戦い、つまりはコスト競争に邁進することになりました。少ない人数で多くのモノを短時間でいかに安く作るか?この事により製造技術のイノベーションは進みましたが、それもそろそろ限界を迎えています。大量生産の時代では、特殊な技術、難解な加工は敬遠され、誰でも作れる部品供給が求められるからです。こうして創造的だった企業は普通の企業に変容してしまいました。

【時代の要請】
日本企業が独創性を失いつつある中、急激な成長を遂げたのがインターネットです。あらゆる業種業態、国や人種を横断して発達したインターネットはこれまでの既成概念を大きく変え、多くの企業はその変化に飲み込まれ淘汰されていきました。

情報が行き交うスピードが格段に速くなると、プロダクト・ライフサイクルはどんどん短くなり、ひとつのヒット商品で一時代を築くような芸当は通じなくなりました。ひとつの主力商品の機能を改善していくだけでは、生き延びることができなくなり、顧客が持つ様々な要望、特に「意味的(情緒的)価値」が求められるようになったのです。

【意味的(情緒的)価値とは】
意味的価値とは、製品が持つ基本的な機能に加えて付加される顧客価値を指します。これにはコトラーの「マーケティングの8P」(ブログ参照)が解りやすいです。コトラーは、顧客のニーズは時代によって拡がっており、それらを8つのPによって表しました。意味的価値について、近年もっとも代表的なものが言わずと知れたiPhoneです。スティーブジョブズが「電話を再発明した」といったこの端末は、iPod、携帯電話、ネット端末という3つの機能を、携帯できるサイズとしてひとつにまとめたものです。この端末が様々な意味的価値を生み出し続けていることは説明の必要もないでしょう。

【意味的価値とデザイン思考】
ここで重要なのは、機能的価値の延長線上に意味的価値は存在しないという点です。もっと言えば、意味的価値を重視することで機能的価値自体も変化してしまう時代だということです。例えば、任天堂のWiiは、「体験」という意味的価値を重視するために、当時ゲームメーカーが競い合っていた基本性能や処理能力、ハイクオリティなゲームソフトという機能的価値を捨てました。その代わり、より複数プレイに適した端末へと機能的価値は変化を遂げたのです。こうした発想は「顧客は何のためにゲームをするのか?」という原点の問いに立ち返らなければ生まれない発想です。

ここに、なぜ今デザイン思考が求められるのか?についての大きなヒントがあります。機能的価値の競争から脱局するためには、これまでの既成概念や常識を振り返り、本質的な顧客のニーズに立ち戻らなければいけないのです。

デザイン思考とは、一をゼロに戻し、再び一を生み出すために求められているのです。

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デザイン思考2 デザイン思考とビジネス

【ビジネスとしてのデザイン思考】
ビジネスにおけるデザイン思考の役割が「イノベーション」であることに異論をはさむ必要はないでしょう。そこでイノベーションとは何かについて触れておきます。世界的社会生態学者のピータードラッカーは、企業の目的は「顧客の創造と維持」であり、それを実現するために必要な2つの機能は「マーケティング」と「イノベーション」であると説いています。そしてイノベーションとは、「新しい価値を創造し、顧客、または社会に提供する事」と定義しています。

では、どのような企業がイノベーションを起こすのか?ピータードラッカーはこう続けます。

「イノベーションに優れた企業は、イノベーションのための活動を厳しく管理する。創造性などという言葉を口にすることはない。創造性とは、イノベーションを行なわなければならない企業が使う中身のない言葉である。」

これはまさに「イノベーションの日常化」に他なりません。必要なのはそれを許容する組織であり、環境であり、風土であり、評価です。それらを厳しく管理していれば、イノベーションが無意識のうちに繰り返される企業になりえるというのです。

「新しい価値を創造し、顧客、または社会に提供する活動を日常化すること」

これがビジネスにおけるデザイン思考の明確な目的なのです。

【なぜ「デザイン」思考なのか?】
デザイン思考の本質は「イノベーションの日常化」であり、その目的は、「新しい価値を創造し、顧客、または社会に提供する活動を日常化すること」であることは、前項で述べた通りです。

では、デザイン思考という概念になぜ「デザイン」という言葉が用いられたのでしょうか?本質や目的からすれば「イノベーション思考」がもっとも適したタイトルであるはずです。ここであえて「デザイン」という言葉を用いたのには明確な理由があります。

そもそもこの言葉を提唱したIDEO(アイディオ)は世界的なデザイン会社であり、デザイナーによる発想力や創造性を価値としています。そして、様々なものを生み出すそのクリエイティブワークをつぶさに観察した結果、デザイナー特有の思考プロセスがあることに気づき、それを体系化したのが「デザイン思考」なのです。

そういう意味で「デザイン思考」は単なる考え方ではなく、明確なメソッドであることが解ります。トム・ケリーがその著書で「デザイン思考とは、イノベーションを日常的に行うための方法論のひとつだ。」と述べているのには、「誰でも手にすることができる」という明確なメッセージがあるのです。

間違ってはいけないのは、デザイナー特有のプロセスだからといって「デザイン思考=右脳的な直感や才能ではない」という点です。デザイン思考では、あくまでも「分析的な考え」と「直観的な考え」をバランスよくMIXさせることが求められており、個人の才能やスキルではなく、チームとしての創造性が大きなテーマとなっています。

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デザイン思考1 デザイン思考とは何か?

【デザイン思考の本質】
先日、スタンフォード大学で「デザイン思考」についての講義を受ける機会がありました。近年、日本でもこの「デザイン思考」という言葉が広がりつつありますが、実際の所それが何を意味しているのかを理解している人は極めて少ないと言えます。そして私自身も「デザイン思考とは何か?」という問いに明確に答えられないでいました。そこで情報を知識にし、実践可能なレベルにまで高めるためにデザイン思考について研究してみました。

デザイン思考は、世界でもっともクリエイティブな企業として有名なデザイン会社「IDEO(アイディオ)」の創業者デビッド・ケリーとその弟であるトム・ケリーが、クリエイティブワークを通して身に着けた発想法をまとめ、イノベーターを育成するカリキュラムとして体系化したものです。デビッドは、スタンフォード大学にd.schoolを創設し、次世代のイノベーターの育成に取り組んでいます。

ではデビッドとトムは、デザイン思考をどのように定義しているのでしょうか?ふたりは2014年に発売された「クリエイティブ・マインドセット」という著書の中でこう述べています。

「デザイン思考とは、イノベーションを日常的に行うための方法論のひとつだ。」

重要なポイントは「イノベーションの日常化」という部分であり、この言葉にデザイン思考の本質が表れています。つまりデザイン思考の目的は、「イノベーションを生み出すモノの見方、考え方を習慣化すること」なのです。

また同著では、デザイン思考を身に着けるための根幹となる考え方として「創造力に対する自信(クリエイティブ・コンフィデンス)」が大切だと述べています。人はもともと創造的であり、それを発揮する勇気さえ持てば、誰でもクリエイティブな人間になれると断言しているのです。

そのための方法論としてd.schoolや各企業などが取り組み始めている教育システムなどが近年注目を集めています。ただし、表層的なメソッドにだけ目を向けるのではなく、その本質「イノベーションの日常化」を理解しなければ、デザイン思考を身に着けることはできません。人のクリエイティブを眺め体系的に理解しているだけでは、そこに辿り着くことはできません。自らの殻を破り一歩を踏み出す勇気こそがデザイン思考への唯一の道なのです。

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テレワーク・エクスペリエンス

テレワーク・エクスペリエンス

8月からスタートした新3カ年ビジョンではOKRに取り組んでいます。

OKRとは、「Objective and Key Result (目標と主な結果)」という意味で、出来るかどうか50%/50%くらいの目標を掲げ、それを実現した時の結果を3つ程度設定する手法です。

そして、この3カ年で「働く人に選ばれるユニークブランド〜小さくてもキラリと光るこだわり企業〜」を目標に掲げました。またその時の主な結果として「サービス品質における高い評価(5選)」「300名以下の企業有償シェアTOP5」「働き方・サービスの注目企業」を目指します。

こうした3カ年ビジョンの達成に向けて今期も「ビジョン・デイ」「SONR.アイデアソン」「生産性アイデアソン」など、新たしい取り組みを次々とスタートしています。

その中の一つに「テレワーク・エクスペリエンス」があります。

これは上半期中に全社員さんがテレワークを体験するという取り組みです。これまでも一部の社員さんや病気や家庭の事情など止むを得ない場合にテレワークを行なっていましたが全員が体験することで、そこから何を感じたのか、どんなメリット、デメリットがあるのかを実感することが目的です。

現在、週1回程度、代わる代わるテレワークを体験していますが、早速反応が返ってきています。

一番多い声は「環境・設備」についてです。会社ではビジネスチェア、デュアル・ディスプレイやWi-fi環境、キーボードやマウス、その他の設備が整っています。しかし、自宅ではそれらが整っていません。会社と同じ生産性を発揮するためには、環境・設備面での充実は大きな課題です。

その中でも特に大きかったのは「椅子」。

多くの場合、長時間集中して作業をするための椅子は自宅にはありません。これは思っている以上に大きな課題です。当然、仕事に適したデスクもないことが多いので、固い椅子で、もしくはソファで仕事をすることになります。

次は「デュアル・ディスプレイ」です。

この仕事をしていて生産性を劇的に上昇させるものが「デュアル・ディスプレイ」です。参考資料と作業画面を別々に表示させることで、画面を行ったり来たりしていた作業がゼロになります。これがあるとないとでは、作業の質、スピード共に劇的に変わると思います。

後は、本人の向き、不向きやサポートしてくれる先輩や仲間の存在、人が集まることによる情報収集や人と関わることでのモチベーション向上など、集まることによるメリットが得られなくなります。

都市部での通勤のストレスや時間を有効に使えるテレワークは、多様な働き方を可能にするとても良い仕組みですが、双方の良さを引き出しながら最適な仕組みを作っていきたいですね。

ビジョン・デイ

ビジョン・デイ

エクストでは「ITの力で働く人を幸せにする」というビジョンを掲げてから、短い時間でより多くの成果をあげるためにはどうすれば良いか?の実践に取り組んで来ました。そこでクラウドサービスを活用した生産性向上やそれをベースにした新しい働き方を模索してきたおかげで、残業をしない働き方や超短時間会議、時差出勤制度(7時出勤で16時退社など)、電話受付時間の短縮(10時〜16時)、テレワークなど、一風変わった職場環境が出来上がってきました。

こうした成果は、生産性向上のために日々具体的な業務改善を積み重ねてきた創意工夫によって生まれてきたものです。そして、8月からスタートする3カ年方針ではOKR( Objective and Key Result 「目標と主な結果」)という手法を用いて、「働く人に選ばれるユニークブランド〜小さくてもキラリと光るこだわり企業〜」を目標に掲げ、高い業務品質と独自の文化で業界TOP5に数えられる企業に育てていきます。そして、スタートとなる新年度では「らしさ創り」を方針として掲げ、今まで以上にエクストらしさを追求していきます。

その一環としてスタートしたのが「ビジョン・デイ」。

「ビジョン・デイ」は、毎週木曜日13時〜16時の間、通常業務をストップして、ビジョン達成にまつわる全てのディスカッションを集中して行う取り組みです。約3時間の間で、「昼礼→掃除→案件MT→販売MT/技術MT→開発MT」などを、メンバーを変えながら30分単位で小刻みに行い、最後の1時間を使い週替わりで「SONR.アイデアソン」「方針進捗MT」「生産性アイデアソン」「社内勉強会」などを開催します。

※アイデアソンとは、アイデアとマラソンをくっつけた造語で、あるテーマに基づいて実行精度を問わず、とにかくアイデアを出しまくるというグループワークコンセプトの一つです。

なぜ「ビジョン・デイ」を行うのかですが、
第1の目的は、ビジョンの深堀や理念の浸透を加速させることです。自社の存在目的や使命と商品サービスを結びつけることで、仕事をよりやりがいのあるものにしていきます。

第2の目的は、アナログコミュニケーションの効率化の推進と効果性の追求です。電話や外出を控えて、全社員が集中して同じ時間を共有することで効率と効果を高めていきます。

第3の目的は、多様な働き方への対応と環境の創出です。今後、テレワークやリモートワークを積極的に取り入れていきますが、そうなるとどうしてもアナログ接点が減少していきます。そこで全員で同じ方向に向かっていく実感を得られる時間を作り出す必要があります。

そして2018年8月2日、第1回目の「ビジョン・デイ」が開催されました。

各チームに分かれて「今後の開発体制について」「プロモーションについて」などのディスカッションが行われ、次週までのアクションが決定。

最後はSONR.アイデアソンで、ボードを良くするためのアイデアを出しまくったのですが、これまでボヤッとしていた新機能のアイデアが一気に具体化されて、今後の機能進化に繋がりそうです。

今後は中小企業の生産性向上のためにそうした取り組みを再現可能な仕組みとしてパッケージングしたサービスを検討しています。エクストは「働く人に選ばれるユニークブランド」を目指して、様々な業務改革に率先して取り組んでいきます。また新しい取り組みや成果はこのコラムで随時ご紹介させていただきます。