働き方改革

シェアオフィスと既存のオフィス、何が変わるの?

シェアオフィスとはどんなものですか?

今、シェアオフィスなどへのニーズが急激に伸びています。これまでのオフィスは、企業が賃貸契約をしたスペースにそこに帰属する社員だけが働く、組織のプライベート空間である事が常識でした。

しかしスタートアップや士業などの小規模事業所からすれば、自社の規模にあったオフィスを探すのは結構大変で、コスト面での負担も非常に多いのが実情でした。また成長に伴ってオフィスを引っ越しすると、その度に設備の購入や引っ越し、大型化による保証金の増額など、なかなか苦労するものです。

そんな中で登場したのが、シェアオフィス、コワーキングスペース、コワーキングオフィスなどと呼ばれる、オフィススペースのシェアリングサービスです。多少の形態の違いはありますが、基本的には異なる企業の社員さんが同じスペースを共有しながら働く形です。

昨今では、情報保護に敏感だった大手企業が、新しいプロジェクトチームやベンチャー型の子会社、マーケットリサーチチームなどを、こうしたコワーキングオフィスで展開するケースも増えてきました。

その火付け役になったのが「WeWork(ウィーワーク)」です。WeWorkは、世界787拠点124都市にシェアオフィスを展開するベンチャー企業です。今年に入ってIPOの準備を始めており、世界的にも注目されている企業です。売上は1昨年から昨年の間に倍増の2000億円強、赤字も2000億円というダイナミックな成長と投資を行っていると言われています。日本に進出後も積極的な出店を行い、国内ではすでに30拠点以上を展開しています。

エクストでは継続的にシェアオフィスを検討しており、これまでに15箇所ほどのシェアオフィスを視察しました。その中でもWeWorkは、洗練されたデザインと設備、入居者同士の交流が活性化するための仕掛けなど、場づくりにおいて他を圧倒するクオリティの高さがあります。

最も大きな違いは、シェアオフィスと言いながら、各社のプライベートスペースがしっかりと確保されていることです。執務スペースと交流可能なフリースペースが贅沢に確保されており、従来のオフィスの機能と規模の変化に柔軟に対応できるシェアオフィスの利点が両立しているイメージです。

デメリットは、コスト面です。社員数とオフィスのコストが常に比例関係にあり、小規模なベンチャー起業ではコストメリットが薄くなってしまうことです。人数が増える度に一人当たり5〜10万円ずつ家賃が上がると言えばイメージしやすいでしょうか?都心の一等地にオフィスがあることを考えると妥当な価格なのでしょうが、アーリーステージにあるベンチャーにはなかなかの負担です。

逆に、他のシェアオフィスでは、コストパフォーマンスの高さや宿泊施設の併設、ユーザー間のビジネス連携の促進、フリースペースのみでカフェのような利用しやすさなど、様々な売りを持った施設がありますので興味のある方はぜひ自分の目で確かめてみてください。

新しいオフィスのあり方と働き方の変化

さて、こうしたシェアオフィスを利用することで、働く人と企業にはどんな変化が起こるでしょうか?考えられる出来事を列挙してみました。

・自社だけでは実現できない設備が利用できる
シェアオフィスの利点は、1社では実現できない設備やソリューションを簡単に利用できるようになることです。会議室一つ取ってみても少人数から大人数まで対応可能になりますし、フリースペース、テレビ会議やプロジェクター、ドリンク飲み放題、電話のための個別スペース、バーラウンジ、コンシェルジュ、シュレッダーと情報保護、セキュリティシステムなどなど、オフィス機能のレベルは格段に上がると言えます。

・距離を超えた採用が容易になる。
これまでのオフィスでは、会社のある場所まで通えるかが採用の基準でした。こうしたシェアオフィスの中には、全国展開している施設も多く、同じ会社にいながら異なる拠点で働く形を非常にローコストで構築できます。
例えば、東京に拠点を出すとなれば、事務所を探し契約をして、保証金を払い、設備を整えて、ようやく働く環境が出来上がります。シェアオフィスであれば、数日で社員さんを迎え入れる事ができます。

・通勤に柔軟性が生まれる
その日の都合に合わせて出勤先を調整する事ができます。特に社員が集まる必要のない日はヘッドオフィスに行かず、自宅近場のオフィスや客先に近いオフィスに出勤するなどが可能になります。また製造業などが採用するWEBデザイナーやエンジニアなどの専門職は、交通の便の悪い本社工場にとらわれない採用ができると募集の幅が広がります。

・新しい知識や情報に触れる機会が増える
自社のメンバーと閉鎖されたオフィスで働くと、情報がマンネリ化して新しい知識や経験が得にくくなります。特に、自社内に数人しかいない職種の場合、その傾向は非常に顕著です。他社のメンバーと触れ合うことで、自社だけでは手に入らない知識に触れることになり成長を促進できます。

・逆に社内メンバーとの交流は減るかも?
フリースペースが広い施設では、誰がどこにいるかがわからなくなるケースが発生するでしょう。また目の前にいるからこそ生まれる自然なコミュニケーションも減少するため、組織としての情報共有が減る可能性があります。

・心理的プレッシャーが増える
気の知れた人が集まるオフィスに出社するのと違い、他の会社の方と交流するとなると服装や身だしなみなど、より気を使うことになります。イケてる会社の人たち(に見える)がいることがプレッシャーになる人は少なくないでしょう。またデザインなど仕事の過程が見える職種や上司に注意される場面が見られてしまうなど、閉鎖的なオフィスにはない心理的負担はあると思います。

・転職した人と一緒に働くことになるかも
昨日まで一緒に働いていた人の転職先が、同じシェアオフィスに入居する会社だったということが生まれる可能性があります。実際に元上司が同じシェアオフィスにいますという方に会ったことがありますが、他社の社風が見えることで、離職の機会になったり、採用の機会になったりすると言えます。

社風は場が創る

一番の課題は「社風」だと思います。社風は目に見えないものですが、それらは職場の環境に大いに現れます。またそうした環境を視覚的に捉えることで社風が浸透していく部分もあります。

内装レイアウトや装飾物、設備や朝礼、電話応対などの慣習、そうしたものがシェアオフィスの空気に左右されるとすれば、自社独自の雰囲気づくりをしようとした時に、それは極めて難しい課題になり得ます。逆に閉塞感のある会社においては、自社の社風を一変させるきっかけになるケースもあるでしょう。

新しいものに柔軟に対応しつつ、大切なことを見失わないようにしなければいけませんね。エクストではテレワークや東京、沖縄などの遠距離拠点などを推進していきますが、究極目指すのは「来なくても良いけど来たくなる会社」を理想としています。

形は変われど目指すものは一緒。働く人が幸せを感じる会社を目指して質実剛健に取り組んでいきたいですね。

株式会社エクスト 代表取締役 高畑 欽哉

著者紹介

株式会社エクスト 代表取締役高畑 欽哉

「ITのチカラで働く人を幸せにする」をビジョンとし、企業の生産性向上のための「インターネット創客事業」と「社内コミュニケーションツール「SONR.(ソナー)」の提供」を行う。残業ゼロ、有給休暇100%取得を実現しながら高い生産性を上げている。電話受付なし、時差出勤制度、沖縄・北海道でのテレワークなど、新しい働き方の実践に取り組んでいる。全国各地で100講演を超えるセミナーを行い、のべ聴講者数は1万名を超える。

最新記事

カテゴリー

アーカイブ

  • SONR.
  • SATORI
  • エクスト