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消費者の気持ちを湧き立たせるものは何か?

あれは小学校低学年だっただろうか。新しいアニメが始まるというのでどんなものかと眺めていたブラウン管の中にとんでもない映像が流された。

そのアニメとは、アラフォー世代の多くが熱中し、その後のロボットアニメに大きな影響を与えた『機動戦士ガンダム』である。

宇宙における独立戦争という重厚なテーマ、子供向けとは思えない緊迫したストーリー展開、何よりモビルスーツという見た事もない兵器のかっこ良さに大きな衝撃を受けた。

その日は夜まで興奮が収まらなかったのを今でも鮮明に覚えている。

当然のことだが、次の日の学校はその話題で持ち切りとなった。それから程なく発売されたコレクションシールやプラモデルに夢中になり、小学校生活はまさにガンダムと共に過ごしたと言っても過言ではない。

なぜ私たちはあんなにも熱中したのか?

1,まったく新しいポジショニング
ガンダム前後でよく見ていたアニメといえば、アルプスの少女ハイジ、フランダースの犬、母をたずねて三千里といったファミリー系、天才バカボン、おじゃまんが山田くん、アラレちゃん、ギャートルズといったギャグ系アニメ、ドカベン、侍ジャイアンツ、キャプテンといったスポ魂、ドラえもん、ルパン三世、未来少年コナン、銀河鉄道999などのファンタジー系といったジャンルが主流であった。

そこにまったく新しいポジションが現れた。ガンダムは、「リアルな描写」「緊迫したシチュエーション」「重厚なストーリー」といったこれまでにない世界観で新しいジャンルを切り開いたと言える。その後は、ダグラム、マクロス、ボトムズといったアニメが続々と登場した。

2,リアリティの追求
・モビルスーツ「ザク」が、スペースコロニー「サイド7」に潜入する緊迫したスタート
・胸のあたりのコクピットからパイロットが下りてきて双眼鏡で偵察する現実的風景
・初めて立ち上がろうとしたガンダムの真正面からマシンガンを構えるザクの威圧感
・逃走するザクを背後からビームサーベルでぶった切るガンダムのシルエット

第1話で登場したこれらのシーンは、「これまでのアニメとは違うぞ」という意思を十分に感じさせてくれた。それぞれのシーンが非常にリアルに描かれている。

今に思えば、このアニメは子供向けではなく、完全に中高生がターゲットだったのだと思うが、低学年の私でも「何だかすごいアニメが始まったぞ!」という興奮を感じた。このリアリティがアニメと現実の垣根を薄くした。

その証拠に自分たちが大人になる頃にはモビルスーツが実在していると本気で信じていた。二足歩行ロボットの夢を大きく育てたひとつにガンダムがあることは否定できないはずだ。

3,人間味ある登場人物
第1話では、主人公アムロの幼馴染であるフラウボウの母親が爆撃で死んでしまう。「君は強い女の子じゃないか!」と頬を叩き避難場所まで走れと叫ぶアムロ。これをきっかけにアムロはガンダムに乗り込んでザクを戦うことになる。ヒロインの母親が爆撃で死んでしまう戦争アニメ、凄い描写である。

その他にも、偵察に来たのに手柄を立てようと勝手に攻撃を始める新兵のジーンとそれをかばい逃がそうとするのデニム。言わば脇役の脇役であるキャラクターにも人格があり、他の場面でも二人の人間関係が解るセリフを盛り込むなど徹底した演出の深さがある。

極めつけは、それを指揮するジオン軍の天才パイロット、赤い彗星のシャア。すでに第2話で、連邦軍のセイラ・マスと兄妹を匂わせるニアミスシーンがあり、第3話で戦闘中にガンダムを蹴り倒すシーンは序盤のハイライトだった。クライマックスまで続くアムロとシャアのライバル関係を決定づけるシーンであった。

ガンダムvsシャアザク

ガンダムvsシャアザク

社会現象を引き起こす物には、必ずといって他との違いを言わずとも感じさせる特徴がある。その特徴は、尖れば尖るほど際だってくるものである。

批判や失敗を恐れず、これでもかと自分たちの世界観を打ち出すその姿勢が、新しい未来を創りだしていくものだと感じずにはいられない。

そういう強い意志こそが消費者の気持ちを湧き立たせるのだ。

株式会社エクスト 代表取締役 高畑 欽哉

著者紹介

株式会社エクスト 代表取締役高畑 欽哉

「ITのチカラで働く人を幸せにする」をビジョンとし、企業の生産性向上のための「インターネット創客事業」と「社内コミュニケーションツール「SONR.(ソナー)」の提供」を行う。残業ゼロ、有給休暇100%取得を実現しながら高い生産性を上げている。電話受付なし、時差出勤制度、沖縄・北海道でのテレワークなど、新しい働き方の実践に取り組んでいる。全国各地で100講演を超えるセミナーを行い、のべ聴講者数は1万名を超える。

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