2015.05.11
24時間戦えますか?
「24時間戦えますか?」。ご存知の方も多いであろうこのフレーズは1990年代前後に放送された栄養ドリンク「Regain(リゲイン)」のCMソングの一節である。バブル経済絶頂の頃、世界で活躍するビジネスパーソンの応援歌として大いに取りざたされた。このコピーは決してネガティブなイメージではなく、逆に誇らしいと言えるほどの熱気があった。まさに時代の一幕を表した名コピーである。
しかし現在では、このようなコピーがマスメディアで使用されることはまずないだろう。ブラック企業なる言葉が生まれ、社会に対してのみならず、社内環境においても厳しくコンプライアンスが求められる現代において、「24時間働きますか?」などというコピーが許されるはずもない。
過去、日本の終身雇用をベースとした大家族主義は世界でも賞賛された経営のあり方だった。会社は経済成長の名のもとに定期昇給、終身雇用を担保し、従業員はその成長のために働き成果を上げ続けてきた。大手に至っては企業年金で老後の面倒まで見ると言うのだから、お互いが信頼関係で結ばれるに至る十分なシステムがあった。
しかしそれらの良さはバブル崩壊によってキレイさっぱり失われ、ただの過労働のみが残ったのが現在の企業の姿のように思えてならない。日本は猛烈に働くことで世界2位の経済大国にのし上がり、その結果生まれた圧倒的な生産性の低さによって世界から取り残されようとしている。
ではどうすれば日本は再び世界の中でリーダーシップを発揮できる存在になり得るのだろうか?それは価値観の変容によってしかなされないだろう。
まず初めにしなければならないのは「経済大国」という誤ったレッテルを直ちにひっぺがし、「資源の乏しい小国」であるという認識を持つべきである。日本が置かれている状況は極めて劣性である。過去の成功体験を直ちに捨て、弱者である現状を強く認識しなければならない。
次に、成功の定義を大きく塗り替えることである。経済成長やGDPなどに惑わされてはならない。日本という国が再び世界で尊敬される存在となるために、豊かさを量ではなく質によってはかる独自の指標を世界に打ち出すことである。その指標こそが目標となり、明日への活力を生むのではないだろうか?
とは言え、経営者は政治家ではない。自らの会社を少しでも理想に近づけ祖国に貢献しなければならない。再び誇らしいと思える名コピーが誕生するのを楽しみにしながら、日々の経営に精進することとしよう。