働き方改革

イノベーションと多角化経営

日本型経営の価値観の一つに「本業主義」があると思います。一つの分野を深掘りし業務や技術に卓越することで他社との差別化を実現する戦略を取るためのポリシーやスタンスを指す言葉です。変化のスピードが早い昨今の経営環境ではこの戦略では対応できないので、深堀りと同時に新たな知を継続的に収集し、既存の知と再結合することでイノベーションを起こそうというのが「両効きの経営」です。(詳しくは以前のコラムをご覧ください。

また最近では「非連続のイノベーション」の重要性も取り沙汰されてきたと感じます。非連続のイノベーションとは、これまでの技術や商品の改良を進めることでは生まれない予測不能な変化と言えます。そして非連続のイノベーションが破壊的イノベーションを生み出していきます。

そう考えると以前はネガティブに捉えられてきた「多角化経営」について考え直さなければいけないと思います。

日本における多角化経営の代表格と言えばヤマハではないでしょうか?楽器、船舶、バイク、自動車部品、電子機器、ゴルフなどなど、様々な分野に進出し数々の成功を掴み取っている事は皆さんもご存知でしょう。

最近のホットな多角化企業と言えばダイソンが挙げられます。

ダイソンはすでに飽和状態にあった掃除機の業界にサイクロン方式を用いる事で「吸引力が落ちない」「紙パックが不要」「軽い」など、様々な価値を生み出しました。新たなテクノロジーを古い業界に持ち込む事でまさに非連続のイノベーションを生み出したと言えます。

ダイソンが面白いのはここからです。これまでに培ってきたモーター技術を駆使して羽のない扇風機、ロボット型掃除機、ヒーター、加湿器、ドライヤーなどに進出、最近ではLEDの照明器具を開発しテクノロジー型家電メーカーとしての地位を築き上げてきました。

そして2017年9月にこれらの開発経験を活かしてEV(電気自動車)に参入すると宣言しました。モーター技術、バッテリー技術など、これまでのノウハウで十分に戦えるという判断なのでしょう。

創業者のジェームス・ダイソンは「本当にできるのかという疑問の声がある? 声の主が我々の何を知っているかは分かりませんが、今は「できる」とだけ答えておきましょう。20年までにモーターと電池という我々のコア技術を活用したEVを開発し、21年から量産を始めます。投資額も現在表明している20億ポンド(約3000億円)で足ります。評価は、ぜひ完成した製品を見てからにしてほしいですね。」と力強く語っています。
※日経ビジネス「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する」より
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/010900888/

こうした動きを見ていると「本業」や「多角化」といった従来の価値観や考え方が通じなくなっていると感じます。私たちは改めて「本業とは何か?」を問い直さなければいけない時期にきていると思うのです。

特にあらゆる業種業態に影響を与えるAIやロボット技術、電子決済や物流などは、ITの発達や進化によってもたらされてきています。つまり、全ての企業は「IT企業である」という認識が必要なのです。そしてそれらの変化が業界の垣根を一瞬で破壊していくのです。

もしかしたら近い将来、「〇〇業界に就職した」という言葉が死後になる日が来るかもしれませんね。

株式会社エクスト 代表取締役 高畑 欽哉

著者紹介

株式会社エクスト 代表取締役高畑 欽哉

「ITのチカラで働く人を幸せにする」をビジョンとし、企業の生産性向上のための「インターネット創客事業」と「社内コミュニケーションツール「SONR.(ソナー)」の提供」を行う。残業ゼロ、有給休暇100%取得を実現しながら高い生産性を上げている。電話受付なし、時差出勤制度、沖縄・北海道でのテレワークなど、新しい働き方の実践に取り組んでいる。全国各地で100講演を超えるセミナーを行い、のべ聴講者数は1万名を超える。

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