紙幣がなくなる日

千葉銀行上海駐在員事務所が2017年7月に発行したレポートに以下のように書かれています。

「中国の大手調査会社「iResearch」社によると、2016 年の中国におけるモバイル決済 市場規模は 38.5 兆元(約 616 兆円)に達しており、これは、米国の同年同市場規模 1,120 億ドル(約 12 兆円)の約 50 倍に相当します。」

IT先進国アメリカの50倍の市場規模というのは驚きですが、中国では偽装紙幣が蔓延しており、お店側も現金決済を嫌う上に、QRコードなどを利用した決済方式によって高価なレジシステムを購入しなくてもモバイル決済を導入できるということで、ものすごい勢いで市場に浸透していった経緯があります。今話題のIotとFintechが見事に噛み合ってマーケットの問題を解決した事例と言えます。

日本は紙幣の信頼度が高く、既存の決済システムがあらゆる市場に定着していることもあり、中国のようなスピード感のある広がりはありませんが、それでも少しずつ進展を見せています。

2017年5月、金融庁が「オープンAPI」という構想を打ち出しました。これは銀行のシステムと外部パートナーが開発したシステムを連携させる仕組みです。この事で銀行取引の状況を家計簿アプリと連携させたり、交通系カードの利用状況と決済情報を結びつけたりと、銀行以外のアプリから直接個人間でのお金のやり取りが可能になったりと、その可能性は大きく広がります。

みずほFGの会長は会見で、こうして電子決済が普及することでATMの維持費用など少なくとも1兆円を超えるコスト削減が見込めると発表しました。もし現金を持ち歩かない世の中になったとしたら、ATMどころか銀行の支店などの必要性は無くなります。集計業務、現金輸送、警備、セキュリティー、それらを維持する管理費、事務員さんの人件費、採用コストなどなど、あらゆるコストが不要になります。

私もApple Watchを購入してから初めて電子決済を利用したのですが、一度使うと辞められないほどの便利さを感じています。コンビニなどでは小銭の心配から解放されますし、自分が何にいくら使っているかが自動的にリスト化されてクレジット情報として記録されていきます。最近では電子決済ができないとストレスさえ感じるようになってきました。

今後、自動販売機や飲食店、小売店など、あらゆる場所で電子決済が普及していくと予想されています。問題は、それに乗り遅れてしまうことです。日本では、紙幣による取引が当たり前になっていますので、決済手数料に対する備えが十分ではありません。例えば、現金のみの飲食店が電子決済を導入した場合、売上の2%〜3%が自動的に手数料として差し引かれます。経常利益3%の会社なら赤字に転落です。加えて、入金が数週間先になり、資金繰りに窮することも懸念されます。そんな状況に二の足を踏んでいる間に電子決済を求める人の顧客離れが起きる可能性があります。それによってさらに業績が悪化します。

イノベーションというのは「起こす」だけが重要ではありません。すでに起こったイノベーションを「使う」「取り入れる」発想が大切です。

飲食店、小売店、美容室などいち早く電子決済を導入し、それを踏まえた収益構造に今から変革しておくことが、今後起こりくる未来に対応する方法です。ぜひ一度検討してみてください。