ネット企業とシリコンバレー

シリコンバレーの視察に行ってきました。そこで得た情報や感じたことを数回に分けてご紹介します。

【ネット企業の真実】
今、成長したネット企業は莫大なキャッシュを持って戦っています。これまでの企業は時価総額の多くを設備投資などに充てており実際のキャッシュは持っていません。しかし、ネット企業は調達した資金の多くを現金として保有しています。そうした潤沢なキャッシュを使って最先端の技術を持つベンチャーを吸収することで、劇的なスピードでテクノロジを進化させているのです。

Facebookは、当時まだ13名、売上ゼロだったInstagramを810億円で買収しました。Googleは、YouTubeを1800億円、人工知能のDeep mindを500億円など次々に買収し技術やサービスのイノベーションに取り込んでいます。

またこれらの企業はネット上で活動する企業の印象が強いのですが、実際には競争力の源泉となるリアルな資源を持っています。Googleは巨大なデータセンターを持つ世界一のPC生産会社であり、amazonは世界で最も優れた巨大な物流システムを持つ企業であると同時に、世界一のクラウドサービスを提供するプラットフォーム提供企業です。

【シリコンバレーのエコシステム】
そんなユニコーン企業が生まれるシリコンバレーには、世界でも稀なエコシステムが存在しています。世界最高峰の大学を中心とした優秀な人材とベンチャーキャピタル、ベンチャーを育てる大企業、これらの要素が集中する希少な環境があります。

その中で、シリコンバレーのベンチャーキャピタルは場外ホームランだけを狙っています。100社に投資し、1社10年のポートフォリオだけをみているのです。小さなIPOなどもそんなに相手にせず1社が爆発的にうまくいくことで100社はさっさと失敗させるのが当たり前。失敗は貴重な経験と捉え、良い失敗を繰り返すことを求めます。良い失敗とは、「予想したが政治的な理由で失敗した」といったビジネスそのものの失敗であり、逆によくない失敗とは、家族経営で大揉めしたなど、ビジネス以外の失敗を指します。

全ては「スケールするか否か?」つまり人間の活動を最大公約数で自動化できるか否か?それが今、お金を集めるビジネスになっているのです。そういう意味で、人間の活動をキャプチャーする事業にVCによる投資が集まっているのが現状です。

また、秘密厳守主義とオープンイノベーションの絶妙なバランスも大きな特徴です。多くの企業が「ムーンショット」と呼ばれる月に届くくらいぶっ飛んだ実験を行う部門を持ち、その秘密は絶対に外に出ません。しかし、特定の技術分野では絶対機密のもと、協業による実験が繰り返されています。オープンにしないと広がらない、でも秘密は守る。そのバランスが絶妙なのです。例えばGoogleは、等間隔に飛ばした気球で全世界をWi-Fiで結ぶ実験を秘密裏に行い、基礎技術を完成させていると言います。

そうして磨いた技術やビジネスモデルを買い取る大企業がいることが、次々とスタートアップが生まれる大きな要因となっているのです。この流れがある限りシリコンバレーの優位性が続くという仮説が立てられます。

このように、シリコンバレーのエコシステムは絶妙のバランスで成立しており、複製や切り取り、モノマネは無理であり、劣化コピー版を作るやり方は大きく間違っていると言えます。シリコンバレーは自前の地域で処理せず、シリコンバレーとのネットワークを構築し「活用」すべきなのかもしれません。