両利きの経営とイノベーション

両利きの経営とイノベーション

【イノベーションとは何か?】
近年の企業経営においてイノベーションは外すことができない重要なものになりつつあります。ITインフラの普及、ITリテラシーの向上が実現し、今度はそれを活用するステージに入りました。そこでは法整備が追いつかないスピードで次々と新しい価値が生み出されています。そして、イノベーションを作り出しているのはそこで働く人々に他なりません。言い換えれば、今後の仕事はイノベーションを自ら起こすか?イノベーションに素早く対応するか?もしくはその両方に対応する必要があるのではないでしょうか?それには、「イノベーションとは何か?」「イノベーションはどのように起こすのか?」を知る必要があります。

イノベーションとは、一言で言うと「顧客または市場に新しい価値を提供すること」です。言い換えれば、昨日まで叶えられなかったお客さまのニーズに今日お応えすることであり、顧客やマーケットにおいての価値を生み出していることがとても重要です。たとえノーベル賞を取るような大発明であっても、それを世の中に価値として還元できなければイノベーションとは呼べないのです。

では、どのようにしてイノベーションを起こせば良いのでしょうか?イノベーションの定義を唱えたシュンペーターは「再結合」と定義しています。簡単に言うと「すでに持っている知識や情報を一旦バラバラにして今までにない形で再度組み合わせる」と言うことです。

そしてそのパターンを分類すると大きく5つに分かれます。
・新しい製品サービスの提供および生産→スマートフォン、ドローン
・新しい生産方法や提供方法→ソーシャルゲーム
・新しい販路の開拓→eマーケットプレイス
・新しい原材料や半製品の仕入れ→3Dプリンタ
・新しい組織→ソーシャルネットワーク
各々に合致する事例も列挙しましたが、これらの中には全くのゼロから生み出されたものはありません。例えばFacebookは、学生の名簿とリアルな人間関係をWEB上で表現し直したのがスタートでしたし、iPhoneは携帯電話、音楽プレイヤー、インターネットを一台の端末に統合したものです。このように画期的な商品サービスも紐解けば既存の知の組み合わせに過ぎないのです。

【知の再結合と両利きの経営】
イノベーションの重要性は今も昔も大きくは変わらないでしょう。しかし、ITの発達によりそのスピードは劇的に早くなりました。一昔前であれば、一つのヒット商品やトレンドを生み出せば長期にわたって安定した収益を確保することができました。その為、じっくりと時間を掛けて完成度を高め、他社との差別化をすることが重要とされてきたのです。
しかし、昨今ではそれらの差別化要素は長続きしません。これからの経営環境は短い差別化商品を、チェーンを繋ぐように次から次へと生み出していかなければならない時代になったと言えます。今後、経営はますます複雑化、高度化していくでしょう。

そこで大切になってくるのが「両利きの経営」です。両利きの経営とは、右手も左手も利き腕のように使える経営のことを指す言葉です。ほとんどの人には利き腕があります。片方が器用なら、もう片方はそれよりも不器用です。それによってAは得意だがBは苦手と言う構図が自然と生まれます。企業経営にも同じ理論が当てはまります。そしてここでの両利きとは「知の探索」と「知の深化」です。

・知の探索
皆さんの周りであらゆる情報に精通していて、どんな話題にも上手に対応できる人はいませんか?こういう人は、新しい情報を浅く広く収集し、頭の中でインデックス(見出しをつける)することでいつでも使える状態にすることが得意な人です。

・知の深化
逆に、不器用ではありますが、特定の分野において誰にも負けないような知識や卓越した技術を持っている人がいませんか?こういう人は、特定の分野における情報を深掘りし、関連付けて誰にも負けない知識を身につけることが得意な人です。

そして多くの場合、特定の分野で卓越し差別化することが良しとされてきたことで、知の深化ばかりが発達し、大多数の企業が知の探索が苦手になっているのです。そこで、この両利きの経営が注目されているのです。自社には関係ないと思われた技術や情報が思いもよらない形で新しい商品サービスを生み出すことは誰もが知っている事実だからです。このように、二つの機能を組織の仕組みとして使いこなすことがこれからの経営で求められているのです。

ここで大きなポイントがあります。本文冒頭で「イノベーションを作り出しているのはそこで働く人々である」とお伝えしました。企業がこの知の探索と知の深化を実行しようとした時、そこで働く人々は何を求められるでしょうか?それは、「知の深化を行う人」、「知の探索を行う人」、そして「それらの知をくっつけたり、剥がしたり、ひっくり返したり、裏返したりする人」です。これらの人々が理解し合いながら、お互いの知識を活かし合うことがイノベーションの第一歩なのです。

今、あなたの組織は両利きの経営に向かっていますか?そして、あなたはどの情報活用に貢献できますか?イノベーションの種はあらゆる所に存在していることを忘れないでください。

AIが人間を越える時

AIが人間を越える時

【AIは人間の脅威となるのか?】
最近、一番驚いたニュースがこちらの記事「終わりの始まり…? 独自言語で話しはじめた人工知能、Facebookが強制終了させる」です。

Facebookは人と自然に会話できるAIを開発しているのですが、その過程の中で2つのAIを会話させたところ、突然、人間が理解できない会話を始め、どうやらそれが成立している、つまり、人が理解できない言語でAI同士が会話を始めたと言うのです。

この記事の中で私が一番驚いたのは次の部分です。

「今回、独特の言語を話し始めたのは、人工知能2体の会話は英語ですべきというプログラムが抜けていたことが原因ではないかと、ネタ元のFastco Designは指摘。(引用)」。

この出来事は私たち人類に大きな教訓を与えてくれています。

それは「人間は不完全である」という変えることのできない事実を改めて突きつけられたと言うことです。不完全な人間が完全に制御できるAIを作り出すことはできない、何より思考すると言うこと自体が不完全であることの証明と言えるかもしれません。

浦沢直樹の「PLUTO」と言う漫画を読まれた方も多いかと思いますが、その中で「ロボット3原則」と言う考え方が出てきます。それは、

ロボットは、
1、人間に危害を与えてはならない
2、人間に服従しなくてはならない
3、自身を守らなくてはならない」。
2は3に優先し、1はすべての条項に優先する。
このプログラミングがある限り、ロボットが人に危害を加えることは絶対にないと言うものです。

しかし「PLUTO」の中ではロボットが人に危害を加えてしまいます。その理由は、ロボットが限りなく人間に近づいたために「感情」が生まれ、その感情がプログラミングの制御を超えてしまうと言う恐ろしく悲しい物語が描かれています。

人類は制御できないものを作り続けています。もし不完全なAIが「自らを制御できない人間そのものを制御しよう」と考えたら・・・。そこにどんな未来が待っているのでしょうか?

そしてそのAIが、人が行なっていた多くの仕事を代用していく未来がもうすぐ訪れます。

皆さんはこの事についてどう感じ、何を考えますか?

人は不要なモノを買う

人は不要なモノを買う

不要なモノで価値を手にいれる

「人々は4分の1インチ径のドリルが買いたいのではない。4分の1インチ径の穴を開けたいのだ。」

これはハーバードビジネススクール教授、セオドア・レビットの言葉です。短い言葉ですが、仕事の本質を見事に捉えているのではないでしょうか?ドリルを買う人はドリルそのものが欲しいわけではなく穴を開けたいだけです。ですから、最初から穴が開いていたら、もしくは穴自体が必要なくなればドリルは不要になるのです。

このようによく観察してみると、私たちが普段購入しているモノの多くは本来不要なものばかりです。私たちはその不要なモノを利用することで別の「価値」を手にしているのです。そして、その「価値」が別の何かで今より便利に、安く手に入るのであれば、今購入しているモノはまさしく不要になります。

例えば、音楽や映画などのCD、DVDメディア、新聞、雑誌などの紙媒体など、ネットを通じて便利で安くダウンロードできるものの多くは衰退の一途を辿っています。人々が欲しいのは情報であってメディアではないのです。タイムリーで安く、加えてかさばらない、おまけにハードウェアを選ばないのですからこの流れは当然といえます。

あなたのスキルが不要になる日

こうした考え方は「働く」という行為自体にも当てはまります。前回のコラムでお伝えしましたが、今から10年から20年で47%の仕事がロボットやAIにとってかわられるというオックスフォード大学の研究にもある通り、同じ成果が上がるなら24時間休憩もなく、文句も言わずに食料も給料もなしで働き続ける労働力があれば、それを選択する事は必然です。

そうやって、あらゆるものが合理化された社会の中で、「働く」という行為はどのように変化していくのでしょうか?その時、働く人はどんなスキルを求められるのでしょうか?ロボットやAIにできない事とは何なのでしょうか?

もしドラで話題になり知っている人も多いと思いますが、マネジメントの生みの親と言われる社会生態学者のピータードラッカーさんがそのヒントとなるこんな事を言っています。

『未来について知っている事は二つしかない。「未来を知る事はできない」、そしてもう一つは「未来は今日存在するものとも、今日予測するものとも違う」という事である。』

そして次のように語っています。

『未来を予測する最良の方法は自ら創りだす事である』

次世代の仕事の多くは、「未来を自ら創り出す仕事」かもしれません。