リアルなことを、リアルじゃない場所で、リアルに行う。

リアルなことを、リアルじゃない場所で、リアルに行う。

アメリカの「eXp Realty」という不動産会社が面白い取り組みで注目を集めています。

「いいなぁ、バーチャル出社。リアルオフィスを捨てた会社が急成長中」https://www.gizmodo.jp/2018/07/real-estate-company-operating-entirely-in-vr.html
(GIZMODO(ギズモード)2018年7月12日より)

記事によると、この会社ではほぼオフィスがなく、ほとんどの社員がバーチャル空間にある架空のオフィスに出社=ログインするのだそうです。よくあるテレワークやリモートワークとは異なり、仮想空間の中で自分の分身となるアバターを操作して、キャラクター同士でコミュニケーションを取りながら仕事を進めていくのです。会議や研修なども仮想空間の会議室に移動して行い、休憩も休憩場所のラウンジに移動して取るそうです。まさに「どうぶつの森」のリアル会社版の様相を呈しています(笑)。

一言で言うと「リアルなことを、リアルじゃない場所で、リアルに行う。」という感じでしょうか?

セカンドライフの登場以来、VRについてはずいぶん昔から騒がれてきましたが、いよいよ現実社会の中で具体的な活用方法が登場してきたと言うことでしょう。

普段から出社して顔を合わせている会社だと想像できない考え方に映るかもしれませんが、今回の場合、営業地域が広範囲に広がる営業系の不動産会社ですので、バーチャルとはいえ、これまで以上にコミュニケーション量が増えていると考えられます。VRオフィスも業種業態によっては、大きなメリットがあると言えます。

顔を合わせてのコミュニケーションは極めて重要だと思いますが、その場をより質の高いものにするためには、デジタルコミュニケーションによる量の担保は、これからの会社においてとても大切なキーワードです。そしてその先で、顔の合わし方もデジタル技術によって効率化されていくでしょう。

国、文化、立地、言語、習慣、時差など、今まで超えられなかったコミュニケーションのギャップを乗り越えるヒントがここにあります。インターネット、IT、IoT、VR、AIといった技術が各々バラバラに発展してきましたが、いよいよ統合のフェーズに入ってきています。ここから、今までになかったような新しい文化が次々と生まれてくるのでしょう。

ところで先日、初めてPlayStation VRを体験させていただいたのですが、リアルな恐竜が登場して大騒ぎしてしまいました。そして三半規管が弱い私は一発で乗り物酔い・・・。VRで仕事するのが当たり前になったら私のパフォーマンスは50%以下になってしまうでしょうね・・・。

紙幣がなくなる日

紙幣がなくなる日

千葉銀行上海駐在員事務所が2017年7月に発行したレポートに以下のように書かれています。

「中国の大手調査会社「iResearch」社によると、2016 年の中国におけるモバイル決済 市場規模は 38.5 兆元(約 616 兆円)に達しており、これは、米国の同年同市場規模 1,120 億ドル(約 12 兆円)の約 50 倍に相当します。」

IT先進国アメリカの50倍の市場規模というのは驚きですが、中国では偽装紙幣が蔓延しており、お店側も現金決済を嫌う上に、QRコードなどを利用した決済方式によって高価なレジシステムを購入しなくてもモバイル決済を導入できるということで、ものすごい勢いで市場に浸透していった経緯があります。今話題のIotとFintechが見事に噛み合ってマーケットの問題を解決した事例と言えます。

日本は紙幣の信頼度が高く、既存の決済システムがあらゆる市場に定着していることもあり、中国のようなスピード感のある広がりはありませんが、それでも少しずつ進展を見せています。

2017年5月、金融庁が「オープンAPI」という構想を打ち出しました。これは銀行のシステムと外部パートナーが開発したシステムを連携させる仕組みです。この事で銀行取引の状況を家計簿アプリと連携させたり、交通系カードの利用状況と決済情報を結びつけたりと、銀行以外のアプリから直接個人間でのお金のやり取りが可能になったりと、その可能性は大きく広がります。

みずほFGの会長は会見で、こうして電子決済が普及することでATMの維持費用など少なくとも1兆円を超えるコスト削減が見込めると発表しました。もし現金を持ち歩かない世の中になったとしたら、ATMどころか銀行の支店などの必要性は無くなります。集計業務、現金輸送、警備、セキュリティー、それらを維持する管理費、事務員さんの人件費、採用コストなどなど、あらゆるコストが不要になります。

私もApple Watchを購入してから初めて電子決済を利用したのですが、一度使うと辞められないほどの便利さを感じています。コンビニなどでは小銭の心配から解放されますし、自分が何にいくら使っているかが自動的にリスト化されてクレジット情報として記録されていきます。最近では電子決済ができないとストレスさえ感じるようになってきました。

今後、自動販売機や飲食店、小売店など、あらゆる場所で電子決済が普及していくと予想されています。問題は、それに乗り遅れてしまうことです。日本では、紙幣による取引が当たり前になっていますので、決済手数料に対する備えが十分ではありません。例えば、現金のみの飲食店が電子決済を導入した場合、売上の2%〜3%が自動的に手数料として差し引かれます。経常利益3%の会社なら赤字に転落です。加えて、入金が数週間先になり、資金繰りに窮することも懸念されます。そんな状況に二の足を踏んでいる間に電子決済を求める人の顧客離れが起きる可能性があります。それによってさらに業績が悪化します。

イノベーションというのは「起こす」だけが重要ではありません。すでに起こったイノベーションを「使う」「取り入れる」発想が大切です。

飲食店、小売店、美容室などいち早く電子決済を導入し、それを踏まえた収益構造に今から変革しておくことが、今後起こりくる未来に対応する方法です。ぜひ一度検討してみてください。

イノベーションと多角化経営

イノベーションと多角化経営

日本型経営の価値観の一つに「本業主義」があると思います。一つの分野を深掘りし業務や技術に卓越することで他社との差別化を実現する戦略を取るためのポリシーやスタンスを指す言葉です。変化のスピードが早い昨今の経営環境ではこの戦略では対応できないので、深堀りと同時に新たな知を継続的に収集し、既存の知と再結合することでイノベーションを起こそうというのが「両効きの経営」です。(詳しくは以前のコラムをご覧ください。

また最近では「非連続のイノベーション」の重要性も取り沙汰されてきたと感じます。非連続のイノベーションとは、これまでの技術や商品の改良を進めることでは生まれない予測不能な変化と言えます。そして非連続のイノベーションが破壊的イノベーションを生み出していきます。

そう考えると以前はネガティブに捉えられてきた「多角化経営」について考え直さなければいけないと思います。

日本における多角化経営の代表格と言えばヤマハではないでしょうか?楽器、船舶、バイク、自動車部品、電子機器、ゴルフなどなど、様々な分野に進出し数々の成功を掴み取っている事は皆さんもご存知でしょう。

最近のホットな多角化企業と言えばダイソンが挙げられます。

ダイソンはすでに飽和状態にあった掃除機の業界にサイクロン方式を用いる事で「吸引力が落ちない」「紙パックが不要」「軽い」など、様々な価値を生み出しました。新たなテクノロジーを古い業界に持ち込む事でまさに非連続のイノベーションを生み出したと言えます。

ダイソンが面白いのはここからです。これまでに培ってきたモーター技術を駆使して羽のない扇風機、ロボット型掃除機、ヒーター、加湿器、ドライヤーなどに進出、最近ではLEDの照明器具を開発しテクノロジー型家電メーカーとしての地位を築き上げてきました。

そして2017年9月にこれらの開発経験を活かしてEV(電気自動車)に参入すると宣言しました。モーター技術、バッテリー技術など、これまでのノウハウで十分に戦えるという判断なのでしょう。

創業者のジェームス・ダイソンは「本当にできるのかという疑問の声がある? 声の主が我々の何を知っているかは分かりませんが、今は「できる」とだけ答えておきましょう。20年までにモーターと電池という我々のコア技術を活用したEVを開発し、21年から量産を始めます。投資額も現在表明している20億ポンド(約3000億円)で足ります。評価は、ぜひ完成した製品を見てからにしてほしいですね。」と力強く語っています。
※日経ビジネス「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する」より
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/010900888/

こうした動きを見ていると「本業」や「多角化」といった従来の価値観や考え方が通じなくなっていると感じます。私たちは改めて「本業とは何か?」を問い直さなければいけない時期にきていると思うのです。

特にあらゆる業種業態に影響を与えるAIやロボット技術、電子決済や物流などは、ITの発達や進化によってもたらされてきています。つまり、全ての企業は「IT企業である」という認識が必要なのです。そしてそれらの変化が業界の垣根を一瞬で破壊していくのです。

もしかしたら近い将来、「〇〇業界に就職した」という言葉が死後になる日が来るかもしれませんね。

働き方改革って何なの?パート2

働き方改革って何なの?パート2

前回のコラムでは働き方改革が何なのか?その課題は何かについて書きましたが、今回はその前提となる生産性向上の具体策について書きたいと思います。

【生産性向上のための3つのポイント】
多くの場合、生産性と聞くと業務を効率化して無駄をなくすというイメージがあると思います。しかし、その方法では一時的には成果が上がるかもしれませんが、価格競争に巻き込まれると、結局のところ効率化した分だけ価格に反映することになり生産性は上がりません。

では、どうやって生産性を高めるのでしょうか?

それには3つのポイントがあります。
1.経営品質の向上にフォーカス
2.コミュニケーションの最適化
3.仕事の最適化
順を追って説明します。

【生産性の高低は顧客との関係によって決まる】
企業における労働生産性は粗利益を期間人員で割ることで算出できます。当然ながら粗利益は売上高によってもたらされるのでいくらで売るかはとても重要なポイントになります。

上記のことから生産性の高い企業は十分な粗利益を稼げる価格で販売している企業と言えます。そうした企業は多くの場合、「顧客からの信頼」を得ています。顧客からの信頼が厚い会社は、顧客から問い合わせが来る、提案が通りやすい、価格決定権がある、自社主導の進行管理など、生産性を高めるための多くのメリットを享受することができます。

では、そうした企業はどうやって顧客からの信頼を得ているのでしょうか?その要因の一つは商品サービスが卓越しているということです。他社にない独創的なサービスやミスのない仕事、的確な提案、期待以上の価値提供、スムーズな進行管理など、商品サービスを通して多くの価値を提供しているのです。

ではどうすればこのような卓越した商品サービスを提供できるのでしょうか?

その答えは、社員さんのモチベーションの高さにあります。仕事に対して高いモチベーションを持っている社員さんは、顧客満足を追求してくれます。また会社の理念・ビジョンの体現、自ら進んで業務改善、チームワークの構築と維持、良好なコミュニケーションなど、多くの良い影響を与えてくれます。

このように、真の生産性向上とは単なるコストダウンや業務の効率化、改善などから生まれるのではなく、人材を核として強みを発揮して企業全体の経営品質を最適化することで実現するものなのです。

【コミュニケーションの重要性】
二つ目の要素はコミュニケーションの最適化です。働く人の多くは会社のコミュニケーションに不満を持っています。実際、あるアンケート調査では、退職する人の本音を聞いてみたところ、退職理由の1位はダントツで「人間関係」2位が「社風」と答えたそうです。

チェスター・バーナードという経営学者が組織成立のための3要素について語っているのですが、その3つとは「共通の目的」「協働の意欲」「コミュニケーション」です。コミュニケーションが滞ると目的が不明確になって社風が淀みます。コミュニケーションは組織が組織であるための血液のようなものです。

経営品質を高めるために最初に取り掛かるべきは、組織を成立させるために自社のコミュニケーションを最適化し組織を活性化させることなのです。組織の活性化が人を活かし結果的に顧客の信頼を勝ち取ることに繋がって行くのです。

【ITを活用して仕事を減らそう】
最後のステップで仕事を最適化していきます。無駄な仕事を見つけ可能な限り「やらない」選択をすることが大切です。もし時間が半分になっても必要な仕事と半分になるならやらない仕事と考えると良いでしょう。エクストでは、以下のような観点で業務の見直しをしています。

最近では様々なクラウドツールが登場していますが、自社の業務と噛み合えば多くの作業を効率化することができます。仕事の最適化を考える上で今、もっとも大切なことはITをいかに味方にするか?無駄な仕事を減らし重要な業務に集中するためにITを活用することが大切です。

ここで重要なことは、仕事の最適化によってできた時間を、自社の商品サービスを卓越化させるための時間に徹底的に投資することです。同時にその時間は徹底的に非効率化することが大切です。なぜなら強みは非効率の中から生まれるからです。効率化によって生まれるものは簡単に他社に真似られてしまいます。本当の強みはじっくりと時間とお金を使うことで育っていきます。

本当に大切なことを本当に大切にできたら会社は必ず変わると思います。

働き方改革には多くの課題がありますが、こうした本質的な部分に気づくチャンスにもなりますね。未来に向かって成長発展する企業になるために超えなければいけない大きな課題ですが、その本質はこれまでと何も変わりません。企業は顧客無くしては存在し得ないのです。生産性改革の成否は、顧客との関係によって決まるのです。

→ 働き方改革は何をもたらすのか?

働き方改革って何なの?パート1

働き方改革って何なの?パート1

【今、話題の働き方改革】
最近ニュースで目にしない日は無いくらい話題になっているのが「働き方改革」。しかし、この法案が実際どんなもので、働く人にどんな影響を与えるものなのかはあまり知られていません。そこで今回のコラムではその内容をできるだけ簡単にご紹介したいと思います。

内閣府の調査によると、現状の出生率が継続した場合、2050年には生産年齢人口が4228万人と、現在の3分の2に減少するというデータが出ました。労働力はその国の国力であり、日本国として解決しなければならない重要な事案の一つと言えます。働き方改革は少子高齢化に伴って起こる労働力不足に対する対策として発案されました。

その骨子は、
1.女性や高齢者が働きやすい環境を作ることで働く人を増やす
2.ワークライフバランスによって生活の質を高め出生率を高める
3.派遣社員の待遇を是正し収入を高める
の3つを実現するための改革です。

その具体策として、
・長時間労働の是正
・同一労働同一賃金による非正規社員の抑制と処遇改善
・職業選択の幅を広げる副業解禁
・テレワークなどの柔軟な勤務体系の推進
などの策が検討されています。

【働き方改革の課題】
そんな働き方改革にはいくつかの課題があります。

・生産性を高められない企業は淘汰される
働き方改革が実現した時にしっかりと利益を残すためには生産性を高めて行かなければなりません。働き方改革は生産性を高めるための政策ではなく、それができない会社は淘汰されて良いという政策です。まさに生産性を高められない企業は誰も助けてくれないし生き残れないと言えます。

企業が生産性を高めなければならないことは今に始まった事ではなく、当たり前にやってきた企業からすれば何の問題もありません。しかし、自社の顧客にその影響が及べばそうも言っていられません。また、業種特性として生産性が上がり難いサービス業などは今後、ますます人材難に陥ることが予想されます。

・働くことへの価値観が変化する
「仕事は労働」というドライな価値観が若い人に誤って伝わる危険があると思います。会社と労働者がギブアンドテイクのみの関係になると人のお役に立ちたいと言った健全な社風が育ち難くなるのではないか?と感じます。本来であれば、これらの取り組みは会社と現場が協力して作り上げなければいけないものです。そうした良好な関係を構築できない企業はやはり淘汰されていくでしょう。

・優秀な人材の流出によるサービスの低下
最近、ネットにおけるヘッドハンティングサービスが急成長しています。このおかげで大手企業を中心に優秀な人材へのアプローチが活性化しています。結果的に人件費の高騰、労働環境の格差が明確になり、中小企業はますます人材難に陥るのでは無いかと心配しています。

特に労働生産性の低い業種、業態は待遇が改善されず、人が集まり難くなります。結果的にコストは跳ね上がり、逆にサービスの質は低下してしまうでしょう。実際、飲食店などに行くと外国人アルバイトの方が多く働いていますが、言葉の壁や習慣の違いなどで現実にサービス力が低下していると感じることが多いです。

・残業抑制によって給与が下がる
残業が減ることは結構なことですが、当然ながら残業代も減少します。働く人にとっては手取りが減ることになりますので、大手を振って喜べる状況ではありません。大手企業には残業の抑制と給与アップの両方を要請していますが、ただでさえ厳しい競争環境にいる中では一筋縄ではいきません。

そうしたことに対応するために、ある会社では残業が減って成果が変わらなければ、減った分の残業代を賞与で返すという取り組みで、残業の減少と報酬の維持を実現している会社もあるそうです。

・フルタイム社員と短時間勤務、在宅勤務の業務バランス
短時間勤務や在宅勤務などは働く人の幅を広げる重要な施作です。我が社でもそうした働き方を取り入れて成果をあげていますが、この働き方が広がるとフルタイムの社員さんは不平等を感じるようになります。

実際にあった話ですが、ある会社で結婚を機に短時間勤務になった社員さんがいます。給与は実績に応じて支給される仕組みですので、短い時間でも実力次第で今まで通りの給与が受け取れます。問題は、みんなで手分けしている間接業務に関わらないという点です。掃除や電話応対、スタッフ会議や勉強会、資料の作成など、多くの分担作業に参加しなくなります。そうすると普通に働いているスタッフから「それなら私も短時間勤務がいい!」という意見が噴出したというのです。

この政策が社会に浸透する中で、こうした問題も解決して行くと思うのですが、会社の業務のあり方や役割分担に対する考え方を見直すきっかけになるかもしれません。

・副業による集中力の欠如や労災問題
一人の人間が同時並行で複数の仕事をこなすことが本当にできるのでしょうか?少なくとも私にはできません。また仕事にはトラブルがつきものですが、未解決の問題を抱えながら別の業務に従事することはとても効率が下がると思います。

そもそも残業ができなくなって、その分の賃金を慣れない他の業務や職場で得るという考えは本末転倒な気がします。また過労によって何らかの事故が発生した場合、その責任の所在はどこにあるのでしょうか?

このようにまだまだ未解決な課題が山積しています。

では働く人がこれらの課題を乗り越えて生産性を高めるために何をしなければならないのか?は次回お送ります。お楽しみに!

→働き方改革って何なの?パート2